建具とは
1、建具とは
(1)建物の出入口等に取付けられる仕切りの事である。建物の外部に使われる物と内部 に使われる物と2種類に分かれる。外部の建具は建物への出入口や風雨から守り外観をととのえる役割もする。内部の建具は個室の出入口、大部屋の間仕切り、クローゼットの扉等あり、和室では代表的な襖、紙貼り障子、書院障子、欄間等を言う。今日、建具は木製、アルミ製(鋼製)、樹脂製と素材も多くなったが、中でも木製建具は高度な技術と数多くの道具を必要とし、熟練と経験が最も問われる。
(2)建物の中の道具という事で「たてぐ」と読み、道具である以上開閉の場合は具合良く動いたりすることが望まれる。
(3)建築の歴史と共に建具の仕事も変わってくる。古くは洞穴(ほらあな)で生活が始まった時より出入口を塞ぐ物があったと思われ、暑さ寒さをしのぐ為、開閉部分が必要になったのが始まりと思われる。
狩猟民族から農耕民族に移り変わって来た時、生活の為食料を保存したりする時に出入口より外敵から中身を守る為に必要になり、防犯や保護の為に普及してきた。
必要に応じて建物の大きさや機能別、そして、見た目の印象等の理由により様々なデザインの建具が生まれて来た。
その昔は、建物を作った職人が最後に建具を作ったと思われるが、現在では分業化されてきた。
(4)我国の気候風土は寒暖の差や湿度の差が大きく、南北に長く四季があることから生活上木質系の建物が必要不可欠と考えられた結果、その材料を使い加工する技術も発達してきた事と思われる。思うに千数百年の歴史の中で培われてきた木工の意匠や技術を絶やすことなく、後世に伝えてゆくべき使命が今私達にはあると思います。「古きを訪ね新しきを知る」温故知新の想いで文化財をより良く保存修理して後世に残していきたいと思います。
2、機能別に分けると引戸、開き戸、はめ殺し戸がある
(1)引戸
上下又は左右の枠のミゾを利用して開閉する仕組みであり、片引戸、引違い戸、引分け戸、3枚引き戸、4本引き戸等があるが上げ下げ戸もある。
(2)開き戸
縦横の枠に丁番や軸を取付けして、内側外側等に開閉する仕組みであり、片開き、両開き、親子開き、自由開き、倒し開き、はね上げ開き、回転開き、折戸開き等がある。
(3)はめ殺し戸
その名の通り動かない戸であり、壁面や屋根天井等より光を取り入れたり飾りとしても用いる事が多く、押縁で固定したり上下のミゾを利用するケンドン式等がある。
3、形状デザインの種類
(1)框戸
縦横の桟を組み合わせてデザインしたもので、伝統的なものはほとんど框戸の部類である。中に板やガラスを入れたり、襖紙、障子紙を貼るものもある
(2)フラッシュ戸
合板(ベニヤ)を木の芯材に貼ったものであり、天然木の突板を貼ったものや合成樹脂仕上げの化粧合板で出来た物もある。近代には広く使われている
4、框戸の種類
(1)板戸
全面に大きく板を入れた物としては門戸等があるが縦横の桟の中に板を入れる桟唐戸や板の上に格子を入れた舞良戸、蔀戸がある。また、地方によっては中の板の事を鏡板と言うこともある
(2)ガラス戸
主に板戸の板の代わりにガラスを入れたものであり、近年ではアクリルを入れる事もある
(3)吹抜戸
框戸の桟はあるが、中に板やガラスが入っていないものである
(4)襖戸
伝統的なものは四方框枠の中に組子を組み、その上に襖紙を何層にも下貼り中貼りし最後に上貼したものであり、近年では中の組子に下貼りとしてベニヤ貼りをして襖紙を上貼りするものもある
(5)障子戸
四方框枠の中に組子を組み、片面(主に家の外になる方)に障子紙を貼ったものである
(6)その他
板戸とガラス戸や吹抜戸を組み合わせて腰付としたり、中抜きとしたり、デザインは色々と組み合わせることにより豊富に変化する
5、建具製作の流れ
立木伐採 → 乾燥 → 製材(二つ割、みかん割、平割等) → 乾燥 → 木取り(製材された平割を框や桟、板といった部材に切断する) → 削り(手押しカンナ盤や自動カンナ盤等で材料の直角や厚みを決める) → 墨付(仕上りを想定して寸法を決めて、加工する為に部材を組み合わせる所に印をつける) → 仕口作り(各部材を組み合わせる為の穴、ほぞやカキを作る) → 仕上げ(組み立ての前に各部材にカンナをかけて表面を滑らかにする) → 組み立て(各部材を組み上げる)
6、仕口(部材が組み合わさる所)の種
(1)穴ほぞ
一枚ほぞ、二枚ほぞ、カマほぞ、包み込みほぞ、打ち抜きほぞ等があり、主に建具の外枠や中桟、束等の接合部に用いられる。襖戸の四方枠は襖紙を張替えする事があるので立框と横框を解体出来るようにカマほぞにすることがある。
(2)腰型
縦材と横材の接合部分に装飾等の目的で面を取った時に面巾の大きさで45°にカットした部分、面の形状ややり方によっては45°にならない時もある。
(3)留加工
2本の部材を直線ではなく接合した時に小口が出ないようにする事、一般的には45°であるがそれ以外はあほう留ということもある。
(4)スリ桟(シキ桟)
引戸の時、縦框が下まで伸びていると敷居を傷つけるおそれがある為に下桟を縦框の下まで伸ばす事。
(5)相欠き
2本の角材の上端下端をそれぞれ等しく欠いて掛け合わせた接合法。
(6)いもはぎ
はぎくちが直角でそのまま貼りあわせること。
(7)斜めはぎ
はぎくちを勾配に削り取り重ねるように剥ぎ合せる事。
(8)相ジャクリはぎ(相欠きはぎ)
同厚の板材を板厚の半分ずつを同巾に欠き取り剥ぎ合せる事。
(9)本ざねはぎ
互いの板を凸凹にしゃくりだし剥ぎ合せる事。
(10)雇ざねはぎ
板の接合面に互いに溝を彫り、別な木を凸部分とし差し込み剥ぎ合せる事。
(11)剣はぎ
はぎ口の片方は剣型(V字型)に削り出しもう片方はそれに合わせてくぼんでしゃくり剥ぎ合せる事。はぎが切れてもあまり目立たない。
(12)つばくろはぎ(ひふくらはぎ)
はぎくちを勾配に取り二段にしゃくり出し剥ぎ合せる事。接着面が広く取れる。
(13)蟻型はぎ
本ざねはぎの核を蟻型にした剝ぎ方。接合強度は大きい。
(14)斜め蟻型はぎ
蟻型はぎのはぎ口を斜めにしたはぎ方
仕口図面
7、建具製作の為の道具(ノコギリ、ノミ、カンナ)
建具製作に必要な作業には、ひく、掘る、削るといった基本的な作業がある
(1)ひく…ノコギリ
材料を決められた寸法に切断したり、とっきを作ったりする。
(2)掘る…ノミ
穴を掘る、とっき部分と接合する為。
(3)削る…カンナ
材料の表面を滑らかにしたり、厚みを決めたりする。
(4)その他
墨付けのための白書きとか化粧の面を取るための様々な形の面鉋やその時々に応じ
て色々な道具を使う必要がある。
8、建具製作の材料
日本は古くより木の国と言われてきた。世界最古の木造建築のある我国では針葉樹の杉・桧が多く使われてきたが、中にはケヤキ・サクラといった広葉樹も使われる事もある。